作曲家、鳥養潮からコメントが届きました!
NYに在住し、オーケストラ作品からオペラまで幅広く活躍する作曲家、鳥養潮が「Traditional+」での委嘱新作に挑みます。鳥養は現役の現代音楽家でありながら、度々来日してNHK邦楽養成シリーズで若手演奏家を指導したり、日本伝統文化財団から僧侶の唱える声明曲の大作「阿吽の音」「存亡の秋」をCDリリースするなど、自己の音の探求を軸に、西洋と日本そして伝統音楽から現代音楽を自在に行き来する女性作曲家です。
鳥養潮プロフィール
鳥養潮
鳥養潮(とりかい うしお):作曲家。幼少より日本伝統音楽、ヨーロッパ古典音楽に親しむ。慶応大学経済学部卒。1970年代後半から実験的音楽活動を開始。1982年パリビエンナーレに招待されて以来、ヨーロッパ各地でコンサートを開催。1983年国立劇場企画による「箜篌」の復元協力、作曲、演奏。1986年Asian Cultural Councilの招聘により渡米。最近の主な委嘱としてアンサンブルモデルン、アンサンブルコンティヌーム、クロノス・クワルテット、演劇集団マブ・マインズ、ロサンジェルス市永久保存の公園音楽等。委嘱の範囲は、パブリックインスタレーション、コンピューターミュージックからオペラ、オーケストラ作品まで多岐にわたる。2009年アメリカでアルバム“REST”を発表し大きな反響を呼ぶ。ニューヨーク在住。

 今回、『笙、琵琶、箏という3つの伝統楽器を用いる』アンサンブルの作曲をお願いしたわけですが

プログラムを構成していく中で、偶然に笙・琵琶・箏の組み合わせになったそうですが、それぞれ強い個性のある3つの楽器編成での作曲は、多分他でもこれまでに委嘱されたことはないのじゃないかしら? 3つの楽器は出てきた場所も歴史も全く違う。例えば薩摩琵琶は語りの中に伴奏がつき、これで完結しています。これは大変だと思いました。日本の楽器は音域が狭いし、奏法にも限りがある。でも若い時から、限界があるということは嫌いじゃなかった。特に日本人の作曲家であるからこそ、その限界がある中に自分の音を見つけたいと、挑戦してきました。今回、この大変な作業を引き受けたのは、日本の伝統音楽に触れる機会がない若い人たちにその良さを知ってもらいたいという「Traditional+」の企画意図と制作の方々の前向きな熱意を意気に感じたからです。NYに在て、それぞれの民族や国の文化の大切さを痛切に感じます。この意義のあるプロジェクトに協力したいと思いました。

 作曲するにあたって、ご苦労もあったと思います

例えば、笙では限られた指使いの中で作りたいコードが出来なかったり・・・。どのようにしたら今までに無いコードが作れるか、古典から抜け出た笙の在り方はないのかを模索しました。
今回の作曲では、オーケストラのような大編成で作る時とは違い、笙・琵琶・箏のそれぞれの楽器の特性を活かしつつ、アンサンブルをすることに意味があると思いました。ですからできるだけ構造はシンプルにして個々の楽器が持つ素晴らしい響きと余韻の美しさを引き出すことを念頭に置きました。

 この作品を聴くお客様へ一言お願いします

今まで聞いたことのなかった笙や琵琶や箏に、それぞれの興味を持って出会って欲しい。これらの楽器が作り出す音の世界に耳を澄ませ、自分たちが日本人であることを感じられるような、若い人々と日本の文化との接点がこの作品にあればいいと願っています。
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